紙をこよなく愛する松本洋紙店のスタッフが、紙の使い心地や、使用例、豆知識などをドンドン発信! | 紙のブログ

スタッフ日記

ワイナリーで出会った“あの質感”──和紙ラベル(雲竜紙?)に、思わず見入った話

先日、休みを利用して山梨・勝沼のワイナリーを巡ってきました。お目当てはもちろんワインなのですが、紙の販売に携わっていると、どうしても職業病で「このラベル、何の紙だろう?」とつい手に取って、じっと眺めてしまいます。今回はその中で、つい長く眺めてしまった一本についての覚書です。

(あいにくの曇りでしたが…、葡萄畑を見渡せる良い眺めでした。)

日本ワインの草分け、シャトー・メルシャン

立ち寄ったのは、シャトー・メルシャンの勝沼ワイナリー。調べてみると、ルーツは1877年(明治10年)に勝沼で創業した日本初の民間ワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」までさかのぼるそうで、国産高級ワインとしての「シャトー・メルシャン」ブランドが生まれたのは1970年とのこと。

ブランドとしての評価も高く、長野県上田市にある系列の「椀子(まりこ)ワイナリー」は、2020年に世界の優れたワイナリーを選ぶ「ワールズ・ベスト・ヴィンヤード」で30位に入り、日本初のトップ50入り・アジア1位に選ばれているそうです。今回訪ねたのは勝沼の方ですが、こうした背景を知ると、ブランディングへのこだわりにも納得がいきました。

ちなみに日本でワインが広く飲まれるようになったきっかけのひとつは1964年の東京オリンピックだった、という話もあるようで、歴史の長さを感じます。

思わず手が止まった、リニューアル後のラベル

棚に並んでいたシャトー・メルシャンのワインは、ざっと二、三十種類。その中で「最近ラベルをリニューアルしました」と添えられた一本に目が留まりました。

近づいてよく見ると、表面に細かな凹凸のある、骨董品のような独特の質感の紙。そっと光に透かすと、紙の中に繊維がすっと走っているのが見て取れます。そこへ金のエンボス(型押し)が軽く重ねられていて、なんとも上品です。

高級感がありながら、どこかモダン。それでいて和の趣も残っていて、海外からの観光客の目も引きそうな佇まいでした。最近は外国人の方も多く訪れる場所ですから、こうした「日本らしさ」と「上質さ」を一枚のラベルで両立させているのは、紙を扱う身としても素直に感心しました。

(もちろんあっさりと購入済み)

冷蔵庫から出しても、よれなかった

もうひとつ、購入して帰ってからの話を。気に入って一本買い求め、自宅の冷蔵庫でしっかり冷やしてから取り出したところ、表面にうっすらと水滴がついていました。お店では常温で並んでいたので気づかなかったのですが、和紙のような風合いの紙だと、濡れるとすぐにふやけたり、よれたりしそうなものです。

ところが、冷蔵庫から出して数十分、室温に戻るにつれて結露で水滴が増えてきても、ラベルは表面の質感も含めてきれいなまま。裏面のラベルは表とは違って、つるりとした光沢のあるタイプで、こちらは見るからに水に強そうでした。表側の和紙調のラベルも、あの質感を保ちつつ濡れに耐えておりました。

そういえば、貼り付けの仕上がりも見事でした。これはやはり工場で貼られているのでしょうか。糊とラベルとボトルの間に全く隙間がなく、気泡やよれもなく、非常に綺麗に仕上がっていました。これだけぴたりと密着していれば水滴も紙の裏まで届きにくいでしょうし、もしかすると防滴仕様のような加工も施されているのかもしれません。

「和紙の風合いはそのままに、水濡れにも強い」。もしそういう仕立てが実現できているのだとしたら、見た目の良さだけで終わらない、実用面まで考え抜かれたラベルだなと感じ入りました。

“その店だけのワイン”という見せ方

ワイナリー周辺の観光地を歩いていると、地元のショップで「ここでしか買えないオリジナルワイン」を見かけました。中身は同じでも、ラベルを変えるだけで“特別な一本”に仕立てているのかもしれません。

旅館や居酒屋、土産物店などでも、こうしてラベルだけをオリジナルにすれば、手軽に自分たちのブランドとして打ち出せそうです。小ロットで上質なラベルが作れるなら、活躍の場は意外と広いのかもしれない、と歩きながら考えていました。

紙屋のスタッフとして、改めて思ったこと

一枚の紙が、高級感も、日本らしさも、そして実用性までも担っている。今回のワイナリー巡りで、改めて「紙の力」を実感した気がします。

あの繊維の入った風合いの様子からすると、これはおそらく「和紙ラベル 白」や「雲竜 白」あたりのラベルかな、と見当をつけてみました。とはいえ確証はありません。

今回手に取ったものと同じかは確かめようもありませんが、松本洋紙店でも和紙ラベルを直接見比べられるサンプルセットを販売しています。実際に手に取って質感を確かめたい方は、以下からどうぞ。

和紙ラベル 10種サンプルセット

とはいえ、あのラベルがなんだったのか気になって仕方ありません。。帰ったら店長に聞いてみようと思います。