紙のブログ

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ご愛用様さま

ご愛用者さまに聞きました: アマチュア写真家 岡本早苗さま

こんにちは、松本洋紙店スタッフです。
多業種にわたる松本洋紙店ご愛用者さまから、今回は
アマチュア写真家 岡本早苗さまにご協力をいただきお話をお聞きしました。
当店の写真用紙もお使いいただいています。

カメラを始めてまだ11年ですのに、多くの賞をとってらっしゃいます。

貴重な作品を7点、掲載させていただきました。
ぜひご一読くださいませ。

Q:プロフィールをお教えください

【略歴】
2019年:日本カメラカラーの部年度賞2位
2019年:フォトコン自由の部 年度賞2位
2020年:日本カメラカラーの部年度賞7位
2021年:フォトコンモノクロ招待席年度賞2位
2021年:フォトコン自由の部年度賞2位
2022年:フォトコン自由の部年度賞2位
2022年:ニッコールフォトコンテストモノクロ部門推薦
2022年:朝日四国写真展大賞
2022年:全日本モノクロ写真展入選
2022年:JPA入選
2022年:EPSONフォトコンテスト入選
その他入賞多数

コンテストが師であり、そこで学んできました。投稿しているうちに自分の作品の方向性もおのずと見えてきます。落ちても入っても全て勉強です。
とは言え、本格的に応募するようになったのは和歌山にあるNEOというクラブの先生や写真仲間さんとの出会いがあった2019年からなんです。切磋琢磨する良き仲間との出会いは大きいです。その出会いもコンテストでした。このブログでも取り上げられている山中健次先生が徳島で撮影会をされて、第2席をいただいたんです。これは大切な出会いだ、とピンと来て、徳島から和歌山に通い始めて6年目になります。
(スタッフ注:徳島から和歌山!と驚きましたが、実は紀伊水道を通るフェリーで2時間で着くそうです。ぜひ一度乗ってみたい。。。)

Q:作品が絵画的でらっしゃる気がします

そうですね、実は高校生から油絵を描いていました。その他にもスキューバダイビング、テニス、旅行と趣味に没頭してきました。まぁ大体が好奇心があり過ぎて、忙しくしているのが好きなんです。寝るのも惜しんで楽しんでいましたね。ただ、時々無理がたたって倒れます。それもあって絵が描けなくなりました。その頃、通っていた歯医者さんの趣味が写真だったんです。行くたびに飾られている写真が変わり、いいなと思っていたところ、先生からもうそろそろ新しいことを始めてみたらどうですか、と勧められてカメラを手にしました。それまでカメラを触ったこともなかったんです。

まず、シャッターを切る心地よさ、シャッター音の小気味よさに惹かれました。でも、撮ったものをパソコンに取り込んでみると、目で見たときの感動が写っていない。どうしてだろう、どうやったらあの感動が作品に写るんだろう、逆にままならないからこそハマったのかもしれません。思い返してみれば、子供の頃から自分の気持ちや心の中の想いを表現するのが好きだったので、その手段が絵から写真に変わり、どうやったら思うように表現できるのかを今でも追い求めているのでしょう。

知らないことを知る。この喜びは大きいです。多分死ぬまで好奇心にウズウズする性分は直らないでしょうね。今では家族も諦めて、それが私だ、と好きなようにさせてくれていますので大・大感謝ですね。

Q:初期の作品と現在の作品を見せていただきました

今回作品を見直していて、初心者の頃の入賞作品に子供が多いのに気づきました。子供と老人を撮るのは今でも好きですね。まぁ、「人」を撮るのが好きなんですが。ふたりの息子がいるのですが、共に自立して東京におりますので、懐かしい子育ての日々を子供たちに見ている部分もあるかもしれません。そして義母の介護に10年、実父も見送り今は実母、と常に私の周りには老人がいます。兄弟や親戚が県外に出て、私一人が県内で生活している状況もあり、叔父や叔母の面倒も見て来ました。当時は大変でしたが、過ぎてしまえば感謝に変わります。それがあったからこそ、年月が過ぎていく、その過程が大切なんだと改めて気づかされています。

最初の3点が初心者の頃、後半4点が現在のものです。最初の頃の作品を見ると、ああ、純粋に撮っているな、と感じます。技術などは関係なく、ただひたすらシャッターを押すことが楽しかった時代です。だからと言って、今の作品に満足しているかというとそれは全くありません。撮っても撮ってもまだまだだな、と感じます。賞をいただいてまた新たにスタート、後ろを振り向く暇はありません。もっと先、もっと先、とこれからも走り続けます。

捕まっちゃった

(2013年:全日本写真連盟トライ・とらいフォトコンテスト ブロンズ賞)

大洲のポコペン横丁で、お姉ちゃんが作った大きなシャボン玉にまるで入っているように見える瞬間を撮りました。

わたし急いでいるの

(2013年:第20回朝日四国写真展 特選)

淡路島の石屋神社のお祭りで、時間が迫っていたんでしょうね、急いで向かう女の子を見かけて撮らせてもらいました。真剣な表情が愛おしくてたまらない瞬間でした。

小さな風

(2014年:第21回朝日四国写真展 奨励賞)

大阪の万博公園にて、夕方の木漏れ日が美しい瞬間、お兄ちゃんやお姉ちゃんは上手にシャボン玉を吹くのに、まだ小さくてなかなか吹けず、手で遊んでいる一瞬を撮影しました。

嫁いで70年

(2021年:フォトコン2021年7月号 入選)

ずっと通っている山間部の地区で撮影しました。お年寄りを撮らせていただくときはコミュニケーションをまず大事にしています。何度も通って、お家でお茶をいただいたり、稲刈りをお手伝いしたり。そんな中でその方の内面が感じられるような写真を撮れたらと思っています。

毎朝の出会い人

(2021年:第28回朝日四国写真展 徳島県知事賞)

実家の近所にて、母が起きぬうちにと朝のカメラ散歩をしているときに知り合いました。撮らせていただいた方には必ず、プリントしてお渡しするようにしています。その作品が賞を取ると、とても喜んでくださいます。

花火・今年は3人

(2022年:第70回ニッコールフォトコンテスト 第1部 モノクローム 推薦)

小さな島のお祭りで出会ったご家族です。お子さんがかわいくて声をかけたら、実はお母さんを数ヶ月前に亡くしたとのこと。撮影は遠慮しようと思ったら、一緒にいたおばあちゃんが、撮ってやってくださいと声をかけてくださいました。シャッターを押しながら涙が溢れて止まりませんでした。

少女と風

(2022年:第29回朝日四国写真展 朝日新聞大賞)

阿南市の海辺にて、屋台も出ないような地元の小さなお祭りのときに、遊んでいる子どもたちの一瞬を撮影しました。曇り空の日だったので、優しい色合いでプリントしています。

Q:カメラやプリンタ等こだわりはありますか?

【プリント】
色々と用紙を変え、レタッチも学んでいます。自分の写真や好みの変化につれてプリントも用紙も変わっていきます。大胆なレタッチに大胆な色使い、静かで深い色合い、どれも好きですが、結局は撮った写真の表現にどんな用紙が合うか、どんなレタッチが合うか、これに尽きます。
松本洋紙店は絹目調を主に使用しています。オーソドックスな仕上がりでレタッチに忠実な仕上がりになり失敗も少ないですね。お気に入りです。

【使用機材】
主に使っているのが、Nikon Z6Ⅱ ミラーレスフルサイズです。
Zレンズ
:14-24  f2.8S
:24-200  f4-6.3
:24-70 F2.8

サブで、フジフィルム XT-4 APC-C 10-24mm、16-80mm、18-135mm
携帯用に、フジフィルム X100M APS-C 23mmを使用しています。

Q:被写体に寄り添ってらっしゃる感じが伝わります

そうですね、寄り添うというのは意識しています。例えば悲しみ、苦しみの場面にカメラを向けることは暴力と同じように感じてしまいます。真剣に仕事をしている方を撮らせていただくときも同じです。お母さんを亡くしたご一家を撮らせていただくときも、ごめんねこんな時に、という思いが抑えられませんでした。自分の心の動きと闘うような、そんな気持ちになったりもします。

写真ってなんだろうと悩んだ時期もあるんです。でもここ2、3年、やっとスコンと抜けた気がします。写真を撮る意味なんて考えなくていいんじゃないか。人とのコミュニケーションがまず第一にあり、そのツールのひとつとして写真がある。撮ることで喜んでくださったらそれで、意味なんてなくて良いのではないか、そう思ったらとても楽になりました。生きること、人と触れ合うこと、寄り添うこと、それを表現する方法がたまたま写真だった、そんな風に感じたりもしています。

Q:今後の作品づくりについてお聞かせください

通い続けている山間部の地区にスポットをあてて、組写真にしたいという思いがあります。個展ができるまで、本にできるまで、が目標です。

初めて会ったのにお茶飲んでって、漬物持って帰り、と言ってくださった方。最初は帰れ、と言われたものの、通い続けたらうちに寄ってけ、と受け入れてくださった方。いろいろな出会い、その方の表情、生き様、そういうものを形にできたらと思っています。

松本洋紙店スタッフより

昨年末、新宿のニコンプラザに第70回ニッコールフォトコンテスト受賞作品展を観に行きました。当店のお客さまがたくさん受賞してらっしゃって楽しく拝見していたのですが、今回も掲載させていただきました「花火・今年は3人」を観た時にいきなり涙がこみ上げて自分でも驚きました。お父さんの笑顔、子どもたちの表情。悲しみそのものが写っていると言うよりは、人の心の美しい瞬間を見せてもらったような。心が揺さぶられ、これはなんだろうと気になっていました。

今回、お話を聞かせていただいて思ったこと。岡本さまの場合、まず第一に周りの人への純粋な関心、慈しみ、人の内面に対する敬意があって、たまたま表現することもお好きで、現在、カメラを手にし、作品に昇華していらっしゃるのかなあ、と。人生は苦しみもがくことも多い、でもそれを飲み込み包み込んだ上での美しさ、内面の深みが、不思議にふわりと表現されて、なぜか明日を信じて一歩踏み出す勇気をもらえるのです。

ちなみに岡本さまご愛用の写真用紙、よろしければこちらからご覧ください。
フォトコンテストに使える写真用紙のページはこちら