紙のブログ

TEL : 03-6272-9923
ご愛用様さま

ご愛用者さまに聞きました: アマチュア写真家 和田喜博さま

こんにちは、松本洋紙店スタッフです。
多業種にわたる松本洋紙店ご愛用者さまから、今回は
アマチュア写真家 和田喜博さまにご協力をいただきお話をお聞きしました。
長く写真用紙をご愛用くださってます。

2021年3月、「連綿の片(RENMEN NO KAKERA)」という作品が
第26回酒田市土門拳文化賞奨励賞に選ばれ、CCNet(中部ケーブルネットワーク)の番組「健幸のすゝめ」にて、ご夫婦での写真生活が取り上げられたりしてらっしゃいます。

(ちなみに2023年10月19日~11月1日、ニコンプラザ大阪THE GALLERYにて
「ニッコールクラブみやこ支部展」が開催されます!)

今回は奥さまのマサ子さまとご夫婦連続でご登場いただきます。まずは喜博さまの貴重なお写真を4点、掲載させていただきました。2点ずつの組み合わせになります。ぜひご覧ください!

Q:プロフィールをお教えください

1947年生まれ、岐阜県出身です。
もともと絵を描くのが好きで、気に入った場所を見つけてはスケッチしたりしていました。たまたまカメラを人から借りて撮ってみたら面白く、30歳を過ぎて一眼レフを手に入れ写真の世界に入りました。

絵とはまた違う、人の動きをどう捉え、どう切り取って、画面からはみ出す部分も意味を持ち、表現として捉えるような面白さに魅入られました。

夫婦ともに同じ趣味を持ち、実家をリフォームしてからは自宅と行き来して過ごしています。標高650mの山里で、冬は雪に埋もれ、夏は草に覆われてしまう。季節の移ろいの中で目まぐるしく変化する自然の豊かさ、荒々しさ、何より不思議さ。自然のかけがえなさを思いながら撮影をすることで、より生活が豊かで楽しくなります。

略歴
1988年   岐阜県瑞浪市 アルファ・ギャラリーにて月例入賞作品展開催
1989年   故林忠彦氏と夫婦で対談する。「写真する旅人」に記事掲載
1990年   岐阜県関市 ギャラリー・ムースにて マサ子との2人展「風写録」開催
1992年   東京銀座 コンタックスサロンにて 2人展「獺祭・風写録」開催
1993年   名古屋市 富士フォトサロンにて、同展開催
2003年   岐阜県関市 ギャラリー・ムースにて 2人展「時の居場所」開催
2013年   写真誌「フォトコン」11月号「一生懸命フォトグラファー列伝」に記事掲載
2013年10月  東京新宿 ニコンサロンbisにて2人展「コノ世ノハナ」開催
2014年 2月  岐阜市 じゅうろくてつめいギャラリーにて、同展開催
2014年 5月  大阪市 大阪ニコンサロンbisにて、同展アンコール展開催
2017年12月  ニコンプラザ大阪 THE GALLEAYにて写真展「西山を見る日」開催
2018年  2月  岐阜市 じゅうろくてつめいギャラリーにて、同展開催
2018年  3月  郡上市図書館にて、同展開催
2020年12月  岐阜市 じゅうろくてつめいギャラリーにて、
写真展「連綿の片(RENMEN NO KAKERA)」開催
2020年12月  大阪市 ニコンプラザ大阪 THE GALLEAYにて同展開催
2021年 3月 「連綿の片(RENMEN NO KAKERA)」(カラー作品)で、
第26回酒田市土門拳文化賞奨励賞受賞
2021年 3月  CCNet(中部ケーブルネットワーク)が番組「健幸のすゝめ」で我が家の
写真生活を取材。「うつろう自然にカメラを向けて~アマチュア写真家
和田夫妻~」として放映

所属団体
ニッコールクラブ  きらり東海道支部 会員
みやこ支部   準会員
土門拳文化賞友の会 会員

Q:どんな想いで撮影してらっしゃるのでしょう

以前はコンテストを主体として写真活動をしていました。幸いすぐに入選をいただいたりして楽しんでいたのですが、仕事が忙しくて時間が取れなくなったんです。コンテストに応募しなくなってから写友の勧めでブログを始め、ブログに載せるために日常的に身近なところで写真を撮るようになりました。催し物を求めて遠方に出かけることはほぼなくなり、自宅の近所や私の実家である郡上市白鳥町のまわり、そこに行く道すがらなどで被写体を求めることが多くなりました。

以前は人の動きや表情などのほんの一瞬、いわゆるシャッターチャンスを狙ったスナップ、インパクトのあるフォトジェニックな被写体探しのため、人の多く集まる場所に出かけていました。今はほとんど人は撮りません。撮れないといった方がいいかもしれません。ふと見つけて、自分がいいな、撮りたいなと思ったものだけにカメラを向けるようになっています。

被写体としては、季節・時間・気象などによって刻々と変わる身近な情景、植物(樹木や花、草等) また小動物など、自然相手のものが多くなりました。今まで気にも留めなかったもの、平凡などこにでもあるものの存在感に気付かされたのです。そして、その世界の奥深さ、そこにある事象の美しさ・精緻さ・不思議さ・奥深さと言った魅力をどう映像としてとらえるかに力点を置くようになりました。遠くに行かなくても被写体はどこにでもあったのです。

そんな風にして撮ってきたものを、8年前50枚ほどのモノクローム作品にまとめ、
新宿ニコンサロンbisで「コノ世ノハナ」と題して二人展を開催しました。ごくありふれた日常を、花を主体として映像化し、日常のかけがえのなさをテーマとして表現してみたものです。それが好評を得て大阪でもアンコール展を開催することが出来ました。そこがコンテストを離れ、私たちの現在に至る写真活動の出発点になっています。

それ以後は、それぞれがテーマを設定してそのテーマにあった作品をまとめ、
「西山を見る日」「連綿の片(RENMEN NO KAKERA)」の写真展を順次開催してきました。その中で、2021年 第26回酒田市土門拳文化賞奨励賞を受賞することが出来ました。私の写真活動が、こうした形で評価されたことを、嬉しく有難く思っています。

Q:今回の作品について一言ずつお聞かせください

花化粧

花化粧-1
花化粧-2

二枚とも桜の老木です。一枚目は山裾、二枚目は小さな神社の境内に咲いていたものです。特に一枚目は、冬に見た時は蔓に絡まれて枯れていると思っていたのですが、春に通りがかったら花が見えたので驚いて撮ったものです。

儚げな花は、人に見せるためではなく、自らを美しく装い、美しさを纏うために咲いている・・そんな風に思える妖艶さがありました。
(作品をクリックすると大きく表示されます)

お盆過ぎ

お盆過ぎ-1
お盆過ぎ-2

一枚目は切通しの向こうに湧いた雲。二枚目は小さな祠の入り口にあった薬缶。お盆の時期が過ぎて、暑さは厳しいけれど少し日が短くなったと感じる、そんな晩夏の季節感を狙ってみました。
(作品をクリックすると大きく表示されます)

Q:カメラやプリンタ等こだわりはありますか?

カメラについて
フィルム時代はコンタックスを使っていましたが、デジタルになってからはニコンです。
フィルムからデジタルに変わったのは、マサ子がニッコールフォトコンテストの賞品で、デジタル一眼レフカメラのボディを貰ったことがきっかけです。しばらくは併用していましたが、デジタルカメラの表現力-ディテールの描写、滑らかさ、暗さに強いこと、そして何より暗室作業をしなくてよいこと、またパソコンを使った画像処理がフィルム時代とは比較にならないほど操作が自在で奥深いことなど等々、今は完全にデジタルの世界に嵌まっています。
今使っているのはニコンD7500でフルサイズではありません。
レンズはAF-S NIKKOR16-85mmを使っています。サブとしてコンパクトカメラも持っていますが、通常の撮影はこのボディとレンズです。
フルサイズやミラーレス一眼を使っている人が多く、羨ましい気持ちもありますが、今の機材にそれほど不自由を感じてはいません。

プリンターについて
作品用として使用しているのは、エプソンのPX-5600です。もう10年ほど使っている古い機種で、当然絶版でインクも手に入りにくくなっているのでSC-PX1Vに買い替えようと思っていますが、まだ使えるし色再現とかもそれほど不満がないので、もう少し使って行こうと思っています。
カメラにしてもプリンターにしても、我が家はあまり機材にこだわらないというか、無頓着なのです。

印画紙について
ピカピカ(光沢・高白色・滑面)の印画紙は好きではないので、半光沢を使っています。
松本洋紙店では絹目を使用しています。写真展用には、ピクトリコのソフトグロスを現在使用中です。わずかに黄味がかっていて表面が滑面ではなく少しシボが入っていて、落ち着いた色合いのプリントになります。紙の厚みもあり、裏打ちをしなくてもいいのも利点です。
以前はモノクローム作品ばかりでしたので、月光のシルバーラベルを使っていましたが、暫く製造中止になっていたのと、カラーで作品作りをすることが多くなったので、色々試した結果、ソフトグロスに落ち着きました。

Q:印刷の際にこだわってらっしゃる点はありますか

パソコンで当然レタッチは行います。しかしあまり極端な画像処理はしません。レタッチソフトを使えば何でもできてしまい、全く別の画像だって作れるのですが、やはり撮った時の
思いをなるべく再現できるようなプリントづくりをしています。具体的には明度、コントラスト、色調等の調整、細部のディテールの調整等です。見やすく見ごたえのあるプリントになるよう心がけています。もちろん合成処理などは遊びの写真以外はしません。写真展の際は、全体の色調の統一感が出るように常に作品同士を見比べながらプリントしています。

写真はその場にいないと撮れません。その場にいることによって肌で感じるものがあります。感じたものを表現として完成度を高めるためにレタッチを使います。ただ撮っただけでは作品ではないと思っています。自分が感じた温度、風、そんなものも含めて感じてほしいと思って表現をしています。

Q:今後の作品づくりについてお聞かせください

2022年4月26日から第27回酒田市土門拳文化賞奨励賞受賞記念の写真展を各務原市市立図書館で行いました。コロナ禍で延期していましたが、やっと開催することができ、多くの方にお越しいただいて嬉しく思っています。

松本洋紙店スタッフより

和田さまも当然、今までご協力いただいていた方々とももちろんお仲間で、写真家ネットワークにはもう驚かなくなりました(笑)。

今回、お話を伺ったときはご実家の方にいらっしゃって、ちょうどその日、オオルリが窓ガラスにぶつかって脳震盪を起こして落ちていたお話をお聞きしました。オオルリって写真でしか見たことがありません!冬にはカモシカも出てくるそうです。郡上八幡から北へ30分ほどの場所だそうですが、都会で暮らしていると想像もつかず、あまりに贅沢に思えます。そういう場所で自然に向き合ってらっしゃるからでしょうか、和田さまの作品からは生きていることの深い実感を感じました。草いきれや日陰の土の湿った独特の匂いが立ち上ってくるようで、特にコロナで旅に出られない今の時期、心に染み込むようでした。

ちなみに和田さまご愛用の写真用紙、よろしければこちらからご覧ください。
フォトコンテストに使える写真用紙のページはこちら